2022年4月30日土曜日

奈良博「大安寺のすべて」展

奈良国立博物館で開催中の特別展「大安寺のすべて」観てきました!

奈良博の特別展の充実度は個人的にいつも120%。
今回もやっぱりすごかったのです!

以前にもブログに書きましたが、2019年に開催されたイベント「ちとせ祝ぐ寿ぐまつり」の「南都のお坊さん講話」で、大安寺 河野裕韶副住職による『幻の大寺~日本初の天皇立寺院、大安寺概説~』を拝聴し、40分という短時間でしたが、あまりよく知らなかった大安寺の歴史をコンパクトに教えていただいたことがありました。
その時の要約はこちら↓
大安寺は南都七大寺の一つ。大寺おおてらとは、厳密には天皇自らが造った寺の意。後に天皇立でなくても国家が直接監督する寺も大寺と呼ばれるようになった。大安寺は日本で最初の天皇立寺院。
その歴史は・・・639年 舒明天皇が建てた百済大寺(桜井市)→673年 天武天皇の高市大寺→677年 藤原京の筆頭寺院として大官大寺(明日香村)→716年 平城京に遷され、今の大安寺となる。
現在の25倍の寺域、90余りの堂塔を持つ大寺院で、当時の仏教の総合大学だった→平城遷都から約30年後に総国分寺・東大寺ができ筆頭官寺の交代→784年 長岡京遷都と南都自体の衰退、度重なる天災→1017年 大火災で伽藍のほぼすべてを焼失→江戸・明治期は大安廃寺と言われた→明治36年 中山寺より住職が来られて中興していく→今は癌封じの寺として有名だが、全貌不明の幻の大寺である。 

今回の特別展では、大安寺の1400年の歴史の中で、現存する仏像や絵画などの寺宝や発掘資料などからわかりうる全てを様々な角度から紹介されていて、たくさんのことを教えてもらえたというような知的好奇心大満足の展覧会でした。

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では展覧会の内容を章ごとにご紹介していきます・・・

第一章では大安寺の始まりについて

第二章では前期後期を通して、大安寺にいらっしゃるすべての天平仏9体が公開されます。前期(~5/22)では、秘仏で本尊の十一面観音立像が約100年ぶりに寺外で公開され、後期(5/24~)では、伝馬頭観音立像がいらっしゃいます。
また「陶枕とうちんといえば大安寺」と言われるくらいたくさん出土したスタンプ文様が可愛い陶器製枕の「陶枕」や「日本霊異記」(国宝)も紹介されていました。

第三章では、かつてご本尊であった釈迦如来像をめぐる世界について
ここで拝見した「刺繍釈迦如来説法図」(国宝・前期のみ)は、個人的に刺繍や布ものが好きというだけでなく、飛鳥時代に制作されたものとしてこれほどまで美しく残っていることにも感動いたしました。
今は失われてしまってどのような姿だったかわからない釈迦如来像について、残された記録からその姿に迫った「釈迦如来像をめぐる世界」は、とても興味深い構成だと思いました。

第四章では大安寺をめぐる人々と信仰について
奈良時代の大安寺は1000人近くのお坊様が集まった巨大な仏教道場でもあり、インターナショナルで最先端のお寺であったこと。
ここでは大安寺と関係のあった有名なお坊様たちとその関連史料が紹介されています。
大安寺の建設に力を注いだ僧・道慈律師関連の出陳品として
かつて額安寺に伝来した虚空蔵菩薩坐像がいらっしゃいました!
道慈律師の出身氏族は額田氏で、額田氏の氏寺が額安寺です。
虚空蔵菩薩坐像は、実は2009年に額安寺で拝観したことがあり、その後2015年に文化庁が購入して奈良博に寄託となり、2016年の「忍性展」にもお出ましになってらっしゃいました。
奈良博寄託なら、いつか仏像館でも拝観できればいいなと思っています。(すでにそうなっているのかどうかは存じませんが)

第五章は中世以降の大安寺について
朝廷からの経済的支援がなくなる中世以降の大安寺は、興福寺の影響下にある寺僧と、西大寺の影響下にある新しい律僧という二つの集団によって成り立つことに。
写真は西大寺から出陳された国宝の金銅透彫舎利容器。
かつて大安寺にあったもので、実際に目にして眼福とはこのこと!と納得の美しさでした。

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特別展「大安寺のすべて」
会期:前期(4/23~5/22)後期(5/24~6/19)
開館時間:9:30~17:00(4/29~5/7は19:00まで)
休館日:毎週月曜日(ただし5/2は開館)
会場:奈良国立博物館 東・西新刊
※会場では、失われた伽藍を復元したCG映像も見られます。