「第75回正倉院展」が開幕しました。(10/28~11/13)
秋空のもと、初日のお昼の時間帯に観に行ってきました。
パンフレットやポスターを見ていると、メインビジュアルの宝物が一つではないような気がする今年の正倉院展。
奈良博に入るなり鮮やかな色が目に飛び込んできて
このカラフルな色に象徴されるように、今年は色鮮やかで美しい装飾のものがたくさん出陳されていました。
正倉院宝物の天平時代独特のデザインや天然染料の色合い配色が好き、そして布もの好きな私にとって見応えある今年の正倉院展。
特に印象に残ったものを図録の写真とともに紹介致します。
布もの好きの理由に「後補があまりない」という点があるのですが、それだけに朽ちていくばかりのものが多かったりします。
でも今年は状態のいいものが多く、特にこの「国家珍宝帳」の筆頭に記載されている「九条刺納樹皮色袈裟くじょうしのうじゅひしょくのけさ」は
刺し子の縫い目がとても細かくて、裸眼では刺し子されているのがようやく確認できる程度にしかわかりませんでしたが、帰宅して図録の写真を見ると、針目の揃い具合が特に整然としているようではないように思え、正倉院宝物の中でも屈指の名宝と言われるこの袈裟に、かえって人の手のぬくもりを感じてしまいました。
この袈裟の包みである「御袈裟幞袷
おんけさのつつみのあわせ」
同色の糸で織られた文様。裸眼では気がつかないくらいで、こちらも図録で確認して溜息をついてます。
全体に刺繍が施された美しい帯「刺繍羅帯ししゅうらのおび」
色あいも文様も素晴らしすぎます。
幡の下端にとりつけた飾りの「幡脚端飾
ばんのきゃくたんかざり」もそれぞれ文様が素晴らしく
綾織のカーテン「白綾帳
しろあやのとばり」など、布好きには堪らないものがたくさんありました。
螺鈿飾りの四弦琵琶「楓蘇芳染螺鈿槽琵琶
かえですおうぞめらでんのそうのびわ」
槽(背面)はきらびやかな螺鈿、弦が張られた面の撥受け部分には、白象の上で楽器を演奏し舞い踊る人々が描かれていて、ユニークなデザインに驚きます。
「刻彫梧桐金銀絵花形合子こくちょうごとうきんぎんえのはながたごうす」は、宝相華を立体的に表現している蓋つきの容器。
「密陀彩絵箱みつださいえのはこ」の花鳥紋様は、まるで天平時代のウィリアムモリスのようだし
石製のスッポン形の蓋もの容器「青斑石鼈合子せいはんせきのべつごうす」は本物の亀のようだし。
自分の好みのものを紹介してばかりですが、その他にも、象牙のものさしの目盛りの正確さや、布作面のくすっと笑ってしまいそうなところ、犀の角の如意や、「磁皿じざら」という名称の実は陶器のお椀や、今年1250年御遠忌の良弁僧正の署名などなど・・・出陳品すべてが素晴らしく、その豊富なラインナップにも楽しませてもらいました。
::
正倉院展は11/13まで、会期中はお休みなしです。
そして観覧は事前予約制の日時指定券をローソン(近鉄奈良駅、JR奈良駅にあり)で購入して会場にお出かけください。
チケット一覧を見てみると、当日でもまだまだ購入できると思います。奈良博会場では購入できませんので、ご注意くださいませ。