2026年4月30日木曜日

「奈良監獄ミュージアム」オープン

令和8年4月27日 
かつての「奈良少年刑務所」が2017年3月に閉庁になってから丸9年。
紆余曲折を経てようやく「奈良監獄ミュージアム」としてオープン。
そして6月には星野リゾート運営のホテル「星のや奈良監獄」も開業予定となっています。

地元民として、旧奈良監獄の建築の素晴らしさを誇りに思っていたことや、老朽化で取り壊しになるかもしれないとなった時には何とか保存できないかとブログでも取り上げてきたので、こうして生まれ変わって新規オープンされたことがとても嬉しくて、開業初日に行ってきました。

ミュージアムの入口は、施設北側にある駐車場(無料でした)の方から
塀の中に入ってみると、とにかく広い!
ミュージアムの入口まで結構歩きますので、「中央看守所見学ツアー」に申込みされる場合は時間の余裕を持って予約して下さい。
「中央看守所見学ツアー」は入館券とは別に予約が必要(無料)。
※文化財保護と安全管理の観点から、 人数・時間限定の予約制です。
予約申込→

では、最初の建物の中に入ります。
ここは、奈良監獄の放射状に広がるハヴィランドの中心に位置する第三寮。かつての姿を今に伝える保存棟として活用されています。
2階建て、各階48室、計96室の独居房があり、扉が開いている独居房の中には入ることもできます。
中を覗いてみると、以前見学した時にあった便器が取り払われていて、なんとも小綺麗な様子。これなら臆せず中に入ることができます。
学芸員の方がスポットガイドをされているのに遭遇して、少しだけご案内を聞いていました。
こちらは階段室中央の縦シャフト(汚物搬送用滑車)
建設当初は舎房に便所がなく、用便用の桶を屋外に搬出したところだそうで、滑車を掛けた金具のボルト痕が残っています。

2階も見学自由です。


2階の天井には明かり取りの大きな天窓。
地下には浴室がありました。

幾つか並ぶ浴室。
地下から地上に出て、展示エリアの方へ向かいます。

でも、途中にあるCAFEにてちょっと休憩。
カレーパンは赤レンガのサイズに作られていて、とっても美味しい!


お隣のショップも素敵なデザインの商品ばかり。

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さてここから展示エリアに向かいます。
展示エリアでは3棟の建物をA~C棟とし、それぞれ異なるテーマで展示をしています。

A棟は「歴史と建築」
8つの展示室をたどりながら、日本の行刑近代化の歩みを紹介。
個人的には、この展示エリアが一番よかった。
キャプションを全部読むのは少々疲れるけれど、それでもこうしてわかりやすく展示されている内容を知ることができて勉強になりました。


明治の五大監獄のミニチュア。完全な形で残っているのは奈良のみ。だからこそ保存できてよかった!
建築や装飾についても詳しく紹介されていて、わかりやすかったです。
以前に参加した、法務省による市民説明会で「刑務所の歴史を伝える史料館のような広報施設の整備が前提」という考え方を法務省が持っていると伺いました。まさにこのA棟の展示がそれに当たると思います。
更生プログラムの質の高さ、量の多さがわかる表↑↓
奈良少年刑務所では、受刑者たちの社会復帰を目指した更生プログラムを独自に導入し、「受刑者」を「生徒」と呼び方を独自に制定するなど、更生に対する高い意識が浸透していることが紹介されています。

また「日本行刑の歩み」の展示で知ったのですが、2025年6月より、これまでの懲役及び禁固は廃止され、新たな刑罰として拘禁刑が導入されたのだとか。

・・・どういうことかと、AIさんに聞いてみました。
従来の「刑務作業の義務」の有無による区分をなくし、受刑者の特性(高齢、依存症など)に応じた個別のプログラムを導入することで、再犯防止と社会復帰を目的とした118年ぶりの大幅な刑法改正だそうで、刑務作業が義務の「懲役」と義務ではない「禁錮」を統合し、一人ひとりに適した処遇を行う。  刑罰による「懲らしめ(懲罰)」から、改善更生や社会復帰といった「再犯防止」へ重点が移ったということだそうです。

次にB棟では「規律とくらし」について
A棟の建物(元・北接見所)からB棟(元・病監)へ移動の道中には
「問題のある受刑者を隔離して収容していた建物」↑や
「奈良奉行所時代に使われていた牢舎」↓なども見ることができます。

手入れされた中庭を見ながら、B棟へ。
こちらでは受刑者の視点から刑務所の営みを紹介しています。
テーマは・規律・食事・衛生・作業・更生・お金・自由
入所時に1人1冊ずつ渡される「所内生活の手引き」の展示や
決められた髪型や
各地の刑務所で違う布団のたたみ方や
各地の刑務所で使われている食器の展示や、朝・昼・夕食の献立
このような展示方法で衛生面を紹介したり↓
刑務所で得られるお金のことなど
B棟の展示は、とにかくわかりやすい説明と、その高いデザイン性。
B棟最後の部屋は自由についての紹介。
ささやかな楽しみでもある、刑務所の中で許された自由について、考えさせられる空間。

B棟からC棟への通路のところに外に出られるテラスあり。

C棟のテーマは「監獄とアート」
かつて医務所であった空間がギャラリーとして活用されています。

中央に天井から床まで吊るされた作品は「声を縫う」
受刑者が書いた詩の断片を布に刺繍して煉瓦のように縫い合わせています。ここで使われている詩は、少年刑務所の更生教育「社会性涵養プログラム」の中で、寮 美千子さんが実施されていた詩の教室から生まれたもの。のちに寮さんが編者となって「奈良少年刑務所詩集」として出版されています。

詩の中の言葉の断片が煉瓦大の布に刺繍されているのですが、詩集を読んで感じた、受刑者一人一人への共感のようなものは感じることができず、できればその断片の元の詩をどこかに掲示されていれば、より一層感情移入できるかもと思いました。

C棟で興味を引いたのは、花輪和一氏の漫画。実際に刑務所の中に入っていた体験を漫画にしている内容が実体験ならではで興味津々でした。






受刑者の刑務所アートもQRコードを読み取って見ると、作者の本音などを知れてまた面白かったです。
展示の最後は「むすびの部屋」。
自分や身近な人へ送るプリズンポストカード。
投函された中から掲示もされるようです。

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監獄ミュージアムは、2019年にプレオープンした「監獄史料館」と全然違って、素晴らしい展示空間、素晴らしい内容でした。

歴史や自然が多く残る奈良への旅の中で、社寺への参拝や伝統行事や特別開帳だけでない「奈良」を感じるのもまたよき旅の一コマになると思います。




この写真↑、同じところを2007年にも撮っていました。
監視人が入るスペースだそうです。

住所:奈良市般若寺町18
開館時間:9:00~17:00(最終入館 16:00)
定休日 :なし
料金  :大人 2500円~(税込)/ 奈良県民は2000円
予約  :公式サイト予約ページより。事前予約を推奨
アクセス:直通バスで「奈良監獄ミュージアム前」下車徒歩1分
駐車場は無料

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参考までに、ブログ内過去記事です。
2007年9月「奈良矯正展」で刑務所見学ツアー
2014年10月「奈良少年刑務所を宝に思う会」設立
2016年7月 建物の保存決定
2016年9月 最後の矯正展へ
2016年10月「重要文化財」に指定
2017年1月「奈良少年刑務所」市民説明会
2017年3月 奈良少年刑務所でピアノコンサート
2017年3月 最後の内部見学会に参加(内部の写真多数掲載)
2017年5月 「ホテル」最初の優先交渉権者選定
※この間に「ソラーレホテルズアンドリゾーツ」から「星のリゾート」へ運営が代わる
2019年11月「監獄史料館」プレオープン(内部の写真多数掲載)