2022年2月2日水曜日

つらつらと思い出すこと*

お水取り研究の第一人者で敬愛する佐藤道子先生の訃報が届きました。謹んでご冥福をお祈り申し上げます。

修二会の時期ではないのですが、東大寺さんにご用事の折などに何度かお泊りいただいたことがあり、晩年の佐藤先生との思い出が少しあります。
2010年の春のこと、たくさんの種類の椿をいただいて、館内のそこかしこに椿のお花ばかり飾っていたことがありました。たまたまその日は、倉橋みどりさんのご紹介で佐藤道子先生が お泊りの日。
椿づくしの奈良倶楽部で先生は「椿をお好きなあなたにワタクシの椿も差し上げましょう。お泊まりのお客さまにもお見せになりなさいな」と、糊こぼしの造り花を後日に送って下さったのです。
その年々によって紅色が微妙に違うことも、煤で黒くなった椿があることも知ることができ、願っても手に入れることができない貴重な椿をいただけて、望外の幸せとはこのことと思った思い出があります。
それから毎年、修二会の時期には庭の椿の枝に造花の椿を挿してお客様にご覧いただいているのです。
初めてお泊りいただいた2010年、その年の修二会で法華懺法の調べにすっかり魅了された私は、先生に「法華懺法って美しいハーモニーですね」と、自分の知っている修二会の浅い知識の中から何か気の利いたことを話さなければと、ついそんな言葉をかけてしまったのです。
すると、先生はするするっとその美しい調べをお一人で歌うように唱えて下さるではありませんか!そして「私も、ある年のある日の法華懺法がとても美しく感じて、満行後に練行衆の方々にお願いして再演してもらったことがあったのです。でもそれは行中に聴いたものとは随分違って、それからはそんなご無理をお願いしなくなりました」とお話下さったのです。緊張しまくりの私はまともに相槌も打てなかったのでしたが、先生の繊細で可憐なお声は今でも耳に残っています。

2016年の2月にもご宿泊を賜りました。
この時は、入江泰吉旧居での講座の為の前日泊でした。
講座の詳しい内容は過去記事に書いていて、その中の<<追記>>に記していますが、大きな仕事を成し、大きな影響力もあって、尚 謙虚に臨んでらっしゃる先生の姿勢に大変感動したことを覚えています。(朝食の席で、先生と倉橋みどりさんのお喋りを耳をダンボにして聞いていたのですが・・・)
この年は、2月末にお泊りいただきそのまま修二会までいらっしゃるのかなと思ったのですが、講座が終わってお帰りになられたのです。

翌年2017年修二会最終日に急に思い立ってと、ご予約いただきました。この時、すでに85歳というご高齢で、最初から最後まで倉橋さんが付き添ってらっしゃって、仕事中の私は途中から聴聞に。(→過去記事)「名残の晨朝」が終わって、多くの方が15日明け方の満行下堂まで残られる中、先生も最後まで聴聞されて、そのエネルギーに驚くばかりでした。

コロナ禍で聴聞がままならない2020年の修二会。
聴聞したくてもできないお客様方に、少しでも修二会の雰囲気を感じていただければとブログをせっせと更新していた私は、自分で撮った写真+カメラ教室の小野先生にも写真を提供していただいて、修二会のフォトブックを作って先生にお送りしたのです。


先生に近い方から、大層喜んでらっしゃるとお聞きしてほっとしました。昨年はNHKの番組やYouTube配信もご覧になられたらいいなと思って過ごしておりました。

宿泊業を通していただいたご縁で、先生の謙虚に仕事に臨まれる姿勢や優しく心配りをして下さるお人柄に触れる機会をいただき、本当に有難いことでした。佐藤道子先生、どうもありがとうございました。