2024年4月18日木曜日

修二会に奉納の灯芯についてと灯芯ひき体験

4月14日(日)
奈良倶楽部のイベント「修二会に奉納の灯芯についてのお話と灯芯ひき体験」にご参加いただいた皆様、どうもありがとうございました。
また、キャンセル待ちをいただきながらご希望に添えなかった皆様、申し訳ございませんでした。
以下、長文になりますが当日のレポをお届けします。

私事ですが、昨年に灯芯保存会さんと知り合うまで、灯芯の本数で明るさが違うことや、修二会において「明かり」以外に大きな使命をもっていることなど、(恥ずかしながら)存じませんでした。
「灯芯揃え」については、言葉だけは知っていても実際の内容を詳しく知らず、灯芯について知り始めてから興味がわいて、保存会の方や、修二会で灯芯に関わる堀池さんに教えてほしい気持ちで、今回の会を企画した次第です。
灯芯の本数が1本・3本・5本で明るさが違う様子↑
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当日は・・・

◆灯芯保存会さんによるお話
◆二月堂修二会で「小綱」役の堀池春彰さんのお話
◆引き台3台で灯芯ひき体験とお茶タイム

・・・の3本立てでお話していただきました。

◆灯芯保存会さんからは
①会長ご挨拶
②安堵町のこと(3人の偉人の紹介)
③藺草栽培の背景(安堵町の地図と川筋)
④灯芯作りの起源と盛衰
⑤保存会の活動
⑥他に灯芯はどのようなことに使われるのか
⑦入会のきっかけ
・・・など、郷土愛そして灯芯愛溢れるお話をうかがいました。


◆小綱・堀池春彰さんからは「灯芯揃え」と「本行中の灯かり」について、お話がありました。

まず、「灯芯揃え」について
別火中の2/23に行われる「花拵え」では、椿の造花がつくられている真横で、和上、処世界、小綱、加供奉行が「灯芯揃え」をしている。本行で必要な灯芯の本数・長さ・太さ(筋数)が記載された記録帳を所持していることから、処世界と小綱は必ず同席するが、和上は必ずというわけではないようで、過去には大導師が担当していたこともあったそうだ。
ただ、「灯芯揃え」に和上がいなくても、結界の「牛玉の灯芯」の結びは、必ず和上が総別火中にすることになっている。
牛玉の灯芯、牛の華鬘分の灯芯は先にとって、華籠に入れる。

灯芯の用途別に灯芯箱に入れていくのであるが、その本数が配布資料(小学館「東大寺お水取り」2008年版より抜粋)と現状では少し変わったものもある↓(写真赤字で訂正部分)
小綱が管理する明かりの灯芯は、この灯芯箱↑には入っていず、別に取って湯屋で管理されている。
また、打合せの際に伺った話ですが、余った灯芯は来年まで灯芯箱の中で保管し、翌年の灯芯揃えの日に取り出して、修二会以外のところで使われます。(修二会では過去のものは使わない)

②修二会本行中の灯かりについて
小綱が管理するのは礼堂正面釣灯籠2基、東・南・北の外陣三面の輪灯で、そのうち外陣の輪灯は灯芯5筋を使った1口で、途中で増やしたり減らしたりはしないで最後まで1口のままであるが、礼堂正面の釣燈籠2基については火口を2口や1口にするので、参加者さんから質問が何点かありました。
・釣燈籠の火口を2口や1口にするタイミングは?→長くなるので割愛しますが、走りのある日とない日、小観音さんの日で違ってくる。
・どのように増やしたり減らしたりするのか?→実演あり
・韃靼の釣燈籠の火口は2口か1口なのか?→1口
・灯芯押さえについて→今も使っている
・灯芯を取り換えるのは?→日中開白前に新調し、3月7日に新しい灯芯に取り換えている。
・灯芯はどれくらい持つのか?→1ヶ月でも2ヶ月でも持つ(灯芯よりも灯明油の減りが大きい)
・「牛玉の灯芯」で結界に灯芯を用いるのはなぜか?→牛玉の威力が絶大だったこと。文化3年刊の二月堂修法に出てくる火災除けの説は、当時の民間信仰の影響から出てきた説と考えられ、東大寺の公式ではない。実際それ以前から灯芯で結界をされていた。
・安堵町からの灯芯奉納はいつから始まったのか?→安堵町の笹治利夫様とそのお父様からご寄進を頂戴しており、笹治利夫様がもし生きてらっしゃれば、おそらく100歳程とのことで、そのお父様からの御寄進ということであれば少なくとも100年以上前からご寄進いただいている。 それ以前の記録は調べてもわかるかどうかとのことでした。
・椿に灯芯がかかっているのは何?→「生いけの灯芯」
・修二会以外に二月堂で灯芯が使われているか?→正月・星祭・功徳日・十七夜などで大体2筋程灯している。 
…などの質問に答えていただきながら進めてまいりました。
写真↑は、小綱の記録帳に記された安堵町からの灯芯奉納者に笹治様のお名前が載っているのを見せて下さっているところ。

今回、司会進行役をつとめています。
手に持っているのは「牛玉の灯芯」の結び目↑です。

修二会に関連する堀池さんの私物もたくさん見せていただきました。
参籠者に配られる次第香水や、紙手、仙花紙を絞って反物にした切れ端部分、灯芯揃えの裁ち物板と裁ち物包丁、洗い桶など・・・。

こちらは裁ち物板と裁ち物包丁を使って灯芯を束ねる紙縒りを作っているところです。↓




そして、最後はおやつをいただきながら、皆さん順番に灯芯ひき体験をしていただきました。(おやつは安堵町の古代米かきもちと、樫舎さんのお干菓子、そして焙じ茶でした)

最後になりましたが、灯芯保存会の皆様、小綱の堀池様には大変お世話になりどうもありがとうございました。
ブログ内の写真の何枚かは参加者さんの写真を使わせていただきました。ありがとうございました。

余談ですが、赤本(「東大寺修二会の構成と所作」)に、初夜上堂前に小綱が油を注し、処世界童子が火を灯すとあるのは間違いで、小綱管理の灯明は小綱が油を注し、小綱が火を点けること。バイブルにしている赤本に意外な間違いがあることを知りました。

尚、安堵町歴史民俗資料館では「灯芯ひき体験」を月一度 開催されています。
4月は21日、5月は26日。時間は13:30~15:30
興味を持たれた方は是非一度体験してみてくださいませ。