奈良国立博物館で、会期を変更して開催されている特別展「よみがえる正倉院宝物-再現模造にみる天平の技-」を観てきました。
昨年7月、皇居三の丸尚蔵館で鑑賞した「正倉院宝物を伝える–復元模造の製作事業と保存継承」は、完成したばかりの「螺鈿紫檀五弦琵琶」を中心とした展覧会構成でした。
「螺鈿紫檀五弦琵琶」復元模造の製作者や協力者の中に、ご近所の方や、知り合いの方、奈良倶楽部のお客様のお名前もあって、近しい気持ちで展覧会を鑑賞した記憶があります。
その展覧会が、奈良博でも開催されるというので楽しみにしていて、コロナ禍で奈良博閉館中に当初の会期が終了してしまってましたが、今回、会期を変更して開催されたこと、本当に有難かったです。
正倉院宝物の模造製作は、明治時代に奈良で開催された博覧会を機に始まったそうで、昭和47年からは、宝物の材料や技法、構造の忠実な再現に重点をおいた模造製作がおこなわれるようになり、以来、人間国宝ら伝統技術保持者の熟練の技と、最新の調査・研究成果との融合により、芸術性・学術性の高い優れた作品が数多く生み出されてきました。(奈良博HPより)
これまでに製作された再現模造作品は、なんと数百点にもなるそうで、その中から選りすぐりの逸品が公開されています。(前期後期の展示入れ替えあり)
会場の広さの違いもありますが、昨年鑑賞した三の丸尚蔵館の展示とは、規模が違って、内容も大変充実していました。(奈良博LOVEの私としてはそれだけで自慢の展覧会です)
多岐にわたる再現模造作品。そのどれもが「本物の正倉院展を見ている」ような素晴らしさで、おまけに、研究成果や最新技術を駆使してわかった調査結果も展示してあって、「たかが模造品」などと言われるレベルではなく、技術的な苦労がよくわかり、それを越えた芸術性の高さに頷くばかりの展示構成でした。
お目当ての螺鈿紫檀五弦琵琶に関していえば、夜光貝、鼈甲タイマイ、紫檀などの材料確保から紫檀材を十分乾燥させて加工に適した状態になるまで7年、実作に入って完成するまでに8年の計15年を費やした、そしてそれぞれに大勢の専門の技術者が取り組んだ壮大なプロジェクトであったことがよくわかりました。
夜光貝のパーツの展示を見て、気の遠くなるような製作工程を想像するだけですごいなぁと思うのですが、現代でさえ、このように時間のかかる製作を、天平時代の工人達はどれ程の時間をかけて作っていたのか・・・想像するだけでワクワクします。
出陳品一覧を眺めているだけでも、この展覧会の充実度がわかりますし、どの作品もうっとりするくら素晴らしく、復元品でありながら美しい品格漂う工芸品が多く、正倉院展を鑑賞した時と同じように”眼福””を感じます。
ちなみに私が特に惹かれた作品は「黒柿蘇芳染金銀山水絵箱」。
その他に、古文書の復元方法が詳しく説明されていて興味深かったですし、復元模造に関わった伝統技術者の名前一覧もあって、それも素晴らしいことだと思いました。
古代の技術が伝承され復元される事業を通して、また伝統工芸の技術が未来へと継承されていくのでしょうね。
見ごたえのある素晴らしい展覧会でした。
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「よみがえる正倉院宝物-再現模造にみる天平の技-」
会場:奈良国立博物館新館
会期:7/4(土)~9/6(日)
開館時間:9:30~17:00(毎金曜日は19:00まで)
休館日:毎週月曜日と8/11(火)※8/10(月)は開館
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今回は、久々にミュージアムグッズに萌えました。
螺鈿紫檀五弦琵琶のポーチに入ったエコバッグと螺鈿箱飴。
どれも素敵でした!