2021年11月15日月曜日

第73回正倉院展*

11月15日 正倉院展最終日
長いようで短かった正倉院展も今日で終了。
事前予約制にも関わらず大勢のお客様方にお越しいただき、奈良倶楽部も久しぶりの賑わいでした。
コロナ禍が落ち着いて、ようやく奈良へ来られたというお客様方の嬉しさも伝わって、ずーっと心が温まる17日間を過ごさせていただきました。ご宿泊いただいた皆様、どうもありがとうございました。

さて、最終日に近い11日に鑑賞した今年の正倉院展。
毎年恒例の鑑賞記を自分MEMOとして、図録からお気に入りの宝物をピックアップという形で記しておきます。

「刻彫尺八こくちょうのしゃくはち
竹の表皮を彫り残して文様を表現してあるところを実際に目にすると、ちょっと感動してしまいました。
「螺鈿紫檀阮咸らでんしたんのげんかん
背面の豪華な装飾も素晴らしいですが、撥受けのところに描かれた男女4人の様子を近赤外線撮影した写真が会場にあり、これは此処に来てこそ見られるのだと、図録だけでは伝わらないものを感じました。
「長斑錦御軾ちょうはんきんのおんしょく
聖武天皇遺愛のひじかけ。実際に愛用されていた痕跡がわかって、それだけで妄想が止まらない!
「曝布彩絵半臂ばくふさいえのはんぴ
布ものが好きなので、楽舞用の錦の足袋にも惹かれましたが、この文様が描かれた上着も素敵です。

「白銅柄香炉はくどうのえごうろ
意外に小さく柄の末端についている獅子形の鎮も素晴らしい造形。

これは柄香炉の火消しの道具かもしれない「鏝形銅器こてがたのどうき
直径6センチほどの小ささで実際に見てこそです。
そしてこれ!「絵紙えがみ」絵入りの紙です。
麒麟が描かれてあって、この紙を巻いていた軸木も洒落ている。
そのお隣に展示してあったのが「色麻紙いろまし
このような色麻紙は以前にも鑑賞した記憶がありますが、やっぱりため息が出るほど美しい。今年の出陳品の最初に出てきた光明皇后の筆になる「杜家立成」も色とりどりの良質な麻紙を継いで書写されていて、会場の最初と最後に関連づいたものがあるのも面白い展示構成だなと思いました。
「筆」は4種類出ていて、表面に斑紋の表れる斑竹を使っているものもあれば、斑竹を模して無文の竹に斑紋を描いたものがあったり。実際には意外に太くてびっくりしたり。
余談ですが、以前に飾管筆の萬谷雄峰さんの作品展を拝見したことがあり(過去記事)そこに同じようなキャップの筆があったのを思い出していました。
紙、筆とくれば硯も。側面が木画で装飾されています。
麻の作業着「早袖はやそで
一枚の麻布を二つ折りにして頭を通す穴を開けて、脇下から裾にかけての部分を縫い閉じただけの簡素なものですが、動きやすくて仕事しやすかったのではと想像しました。
「白絁腕貫しろあしぎぬのうでぬき
写経生の腕カバーも色々妄想膨らむ一品です。

他にもたくさん見どころがあるのですが、鑑賞してから日にちが経っても、思い出しては にやにやしているものを書き留めました。
また、会期が始まってから鑑賞まで時間があったので、「聴く美術」というアプリをダウンロードして図録も先に買って予習も頑張ったのですが、やはり「百聞は一見に如かず」だと感じました。
実際の大きさや形や色彩、そして1300年前の人たちの息吹も感じ取れて、あれこれ想像しては楽しい時間でした。
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帰りに見た、秋色に染まる奈良博の庭園。