2021年5月8日土曜日

奈良博「聖徳太子と法隆寺」展

奈良国立博物館で、6/20まで開催の 
聖徳太子1400年遠忌記念特別展「聖徳太子と法隆寺」へ。
推古天皇15年(607)に聖徳太子が創建したと伝わる法隆寺。
今年、令和3年(2021)は聖徳太子の1400年遠忌にあたり、これを記念しての特別展では法隆寺の全面協力のもと、護り伝えられてきた寺宝を中心に貴重な文化財が一堂に会します。
展覧会は「1章 聖徳太子と仏法興隆」「2章 法隆寺の創建」「3章 法隆寺東院とその宝物」「4章 聖徳太子と仏の姿」「5章 法隆寺金堂と五重塔」の5つのテーマに分かれて構成されています。

開催早々の4月に観に行った展覧会の鑑賞記ですが、いつものように図録から画像を拝借して、個人的に印象的だった出陳品を紹介しながら綴っていきますので、よろしければお付き合い下さい。
::
「1章 聖徳太子と仏法興隆」
第一展示室で最初に拝見したのが、ご存知『聖徳太子二王子像』
かつての一万円札や教科書でもお馴染みで、聖徳太子といえばこのお姿が思い浮かぶのですが、明治時代に皇室に献上された、奈良時代制作の本物の肖像画の前に立つと、なぜか武者震い。これから拝見していく特別展に胸が高鳴ります。
(※宮内庁所蔵のものは前期展示のみ。後期は明治時代制作の摸本が出陳)
絹を45層、漆で塗り重ねた『夾紵棺断片きょうちょかんだんぺん
大阪・安福寺で発見され(床の間の飾りとして使われていたものを、明治33年、古墳調査のために安福寺に寄宿していた猪熊兼勝氏によって見出されたという経緯も興味深い)、太子のお墓がある大阪・叡福寺の棺台を明治期に計測したサイズと安福寺の夾紵棺断片とが重なったことから、太子の棺の可能性が指摘されています。
それにしても、絹を45層重ねてというのがすごいです。
::
「2章 法隆寺の創建」
ここでは、焼失した法隆寺の前身寺院である「若草伽藍」の出土品や儀式で用いられた仏具類から法隆寺創建当時の姿にせまります。
この中で特に印象に残った展示物は
『十七条憲法板木』(鎌倉時代)と『天寿国繍帳残片』
こちらは鎌倉時代制作の新繍帳(国宝)。飛鳥時代の断片の展示もあり、新旧両繍帳断片が前期展示で拝見できます。(※いずれも後期展示は無し)
::
「3章 法隆寺東院とその宝物」
聖徳太子が住んだ斑鳩宮の跡地に立つ東院。
太子の息子・山背大兄王とその一族が蘇我入鹿に滅ぼされた際に焼失した斑鳩宮跡地の荒廃を嘆いた奈良時代の行信僧都が、阿部内親王(後の孝謙天皇)に訴え夢殿を建立し、次第に伽藍が整えられました。
太子の遺徳を讃える儀式「聖霊会しょうりょうえ」も東院伽藍で行われており、なかでも十年に一度の「大会式だいえしき」など、東院伽藍にまつわる法要も紹介されています。
夢殿本尊救世観音像の左脇に安置される『行信僧都坐像』(国宝)
意志の強い顔立ちが印象深く、展覧会場にお出ましの仏像の皆様方の温和なお顔立ちとはずいぶん違うものを感じます。
東院伝法堂に安置される『阿弥陀如来像』。
行信僧都の次に拝見して、ほっと肩の力が抜けました。

東院伽藍、夢殿北側に位置する一棟の建物、絵殿と舎利殿。
絵殿には聖徳太子の生涯を絵画化した障子絵があり、舎利殿は聖徳太子が2歳の時に掌中から出現したという舎利を安置する建物で、奈良博では絵殿の世界を中心に紹介されます。(東博では舎利殿の世界)
図録には絵殿内部の写真も掲載されています。
『聖徳太子絵伝』前期展示でのみ全10面を一挙公開。(後期展示無し)
平安時代制作の絵殿の障子絵や、絵殿に安置されていた聖霊会の本尊「聖徳太子坐像(伝七歳像)」↓や、絵殿の本尊「観音菩薩立像(夢違観音)」↓も展示されています。
::
「4章 聖徳太子と仏の姿」
太子の姿を表した代表的な像や仏教絵画の名品が揃います。
注目は、平安時代に太子の500回忌に制作された聖霊院・秘仏本尊の国宝『聖徳太子および侍者像』(聖徳太子像は図録表紙に)
『聖徳太子像』が近寄りがたい雰囲気を醸し出している具象的な表現に比べて、『侍者像』は大らかでユーモラスな雰囲気を漂わせていて面白いです。
::
「5章 法隆寺金堂と五重塔」
奈良博のいつもの展覧会では第一展示室になる東新館が、この特別展では最後の展示室になっていて、「西院伽藍」の金堂と五重塔の世界が再現されています。
金堂東の間の本尊・国宝『薬師如来坐像』。
何とも上品で優しげで有難い有難いと拝観いたしました。そして、光背裏面には法隆寺創建に関わる重要な銘文があり、それをしっかり拝見できるのもすごいことですね。
金堂四天王立像のうち『広目天』と『多聞天』。
背面や邪鬼などもしっかり拝見でき
金堂内陣旧壁画『飛天図』も。
ただ、このあたりは2008年に開催された「国宝 法隆寺金堂展」で拝見したものも多く、今回この展示室で印象深かったのは、五重塔初層の東西南北の四面に安置されている『塔本塑像』です。

特に、北面の釈迦の入滅を嘆き悲しむ圧巻の『羅漢像』
こうして何体かをじっくり拝見できたこともまた有難いこと。

飛鳥時代以来の貴重な文化財や護り伝えられてきた寺宝の数々が、1400年の悠久の時を超えて目の前にある奇跡。素晴らしい特別展の後期展示や、状況が許せば東京展も拝見したいです。
::
聖徳太子1400年遠忌記念特別展「聖徳太子と法隆寺
会期:2021年4/27~6/20(前期:~5/23・後期5/25~)
会場:奈良国立博物館
休館日:毎週月曜日
開館時間:9:30~17:00(土曜日は~19:00)
※前売日時指定の事前予約制ですが、当日券もあります。
※事前予約は前日までにこちらから
※当日券の有無は奈良博のTwitterでご確認ください。