昨年の講演会に引き続いて、今年は「PartII」バージョン。
11/8、東大寺金鐘ホールで「奈良ゾンタクラブ」30周年記念企画の講演が開催され、講師の上司永照師のお話を聞いてきました。
今回は、ゾンタクラブの上田トクエ30周年実行委員長の、「青衣の女人」のお話を伺いたいという、昨年来からのリクエストもあって、「青衣の女人」が登場する修二会の過去帳を中心にお話されました。
前半は、昨年の講演★でもお話しされた「修二会」について。
修二会の正式名称「十一面悔過法要」の『悔過』とは、過ちというより「行き過ぎた行為」のことではないか。その行き過ぎた行為を一身に受けて身体を投げ出してあやまり許しを乞うことが悔過法要なのでは?これでいいですか?これで春を迎えることができますか?と問い、前に進むための法要ではないかと思うとお話されました。
練行衆は観音様に近づかなければならないので、そのため娑婆と火を別にするのが「別火」で、上司さん自身は、明治時代よりも前に近づくような味わい深さを感じる別火の生活が好きとおっしゃってました。別火の話をしだすと止まらないので、それはまたいつか・・・ということでしたが、その機会がいつかあることを願っています。
お話が盛り上がって、講演も終了間際になって過去帳の話となり、過去帳と青衣の女人についての簡単な説明と、最後に過去帳を詠みあげてくださいました。
修二会に詳しい方ならご存じのことかと思いますが
過去帳は、修二会期間中に2回ある特別な日(5日の実忠忌と12日の水取りの日)にのみ詠みあげられ、読み役は、5日は南座衆之一、12日は北座衆之一と決まっています。参篭5年目の練行衆がいる年は、「新過去」といって5日に読み役を務めます。
余談ですが・・・12日に読み役を務める北座衆之一の役は、平衆のリーダー役で一番カッコいい。ので、衆之一を卒業するときに少々未練があったということもおっしゃってました。
さて、青衣の女人について・・・鎌倉時代のある年、集慶という練行衆が「過去帳」を読み上げていると、薄暗い格子の内に青い衣の女人がすうっと現われて、いかにも恨みがましいそぶりで「など我が名を読み給わぬぞ」と言ったという。女人禁制の浄域のなかに女の人が姿を現わそうなど夢にも思わなかった集慶は、驚いてとっさに「青衣の女人」と読み上げた。すると、その女人はそのまま姿を消してしまったという。それ以来「青衣の女人」は過去帳の中に書き加えられて、現在も読み続けられているという、厳しい行法の中にも心を和ませてくれるようなお話であります。(参考「奈良の昔話」)
ところで「女人禁制の浄域」とありますが、これは決して女性が穢れているということではなく(二月堂内陣には修二会期間以外は女性も入ることができます)、女性が入ると練行衆は違う心になるから、100%の力が120%くらいになってしまうからだとおっしゃってました。(それは普段の力ではなくまさしく「行き過ぎた行為」ということなのでしょう)
そして終了間際に過去帳読みあげを。
「過去帳」に名前のあがっているのは、大仏鋳造の願主であった聖武天皇や光明皇后、大仏建立に力を尽くした行基菩薩や良弁僧正、実忠和尚。東大寺の歴代の別当、練行衆として修二会に参加した人々、再建の大施主であった源頼朝、再建の勧進をした俊乘坊重源など東大寺に対して功労のあった方々や、外部から外護者として功績のあった人々です。
最初の「大炊天皇」までを本掛け、そのあと節が変わってスピードがついて「青衣の女人 別当延杲大僧正」までが中掛け。それから最後までが早掛けで、ものすごいスピードで詠みあげます。
手元の時計で「青衣の女人」までは17分くらいでした。
ここまでは師について一生懸命稽古をして、早掛けからは自分で稽古をするそうです。「青衣の女人」が済むと途中で帰る人が多いので、できれば最後まで残って聴いて下さいとおっしゃってました。
また、過去帳に多くの人の名前が上がっていますが、明治時代以降は参籠した者のみとなっているそうです。
時間を超過してのものすごい濃密なお話をお聞きしました。
ありがとうございました。
この後は、上司永照師同行で二月堂内陣参拝とお話もありでしたが、私は時間の関係でここまでの参加でした。
ところで・・・閉会の挨拶で、上田トクエ30周年実行委員長が、「青衣の女人」というのは、東大寺に心を寄せていた名もなき多くの女性たちを労って詠みあげてくださったのではと、東大寺さんの懐の深さを感じますとおっしゃってました。
時代を経て、その女性たちの一人一人となる私達。上田さんの言葉に成程と共鳴するのでした。
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当日は、同じ「東大寺総合文化センター小ホール」で「篠山紀信 東大寺写真展」が開催中でしたので、そちらもちょっと拝見。
以前にあった写真展とほぼ同じ内容でしたが、この↑お松明の写真のみ新しくなっているということでした。
(会場内写真撮影可でした)(この展覧会は終了しています)
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また同じ館内の「東大寺ミュージアム」では、12/17まで、知足院の「地蔵菩薩立像」と「厨子」が特別公開されています。