2019年9月19日木曜日

京終さろん「東大寺の祈り 声明Ⅲ」

月一回、紀寺にある璉珹寺で開催されている「京終さろん」。
昨年の京終さろん「東大寺の祈り 声明Ⅱ」に続いて、東大寺持宝院住職・上司永照師によるシリーズを今年も聴講してきました。
3回目の今回は、まず東大寺で毎月8日に大仏殿で厳修される月例法要(4/8の仏生会を除く)の声明「三十二相」から始まりました。
お釈迦さまには 三十二相と呼ばれる 人間離れした32の身体的な特徴があり、それはそれぞれお釈迦さまの徳を象徴したもので、「三十二相」はお釈迦さまの真理を称える声明だそうです。
東大寺では、経典にある三十二相の順番と違った順に唱えられるということで、頭とうを勤めるのは最年長の方と決まっているそうです。(頭を取るときは扇子を立てるなどの所作のお話もあり)
全部唱えると30~40分の「三十二相」の一部を唱えて下さいました。
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そして、いよいよ修二会の声明のお話に入ります。
昨年の講座で、何度もおっしゃった『修二会は、精進潔斎しただけでは間に合わない。結界して結界して結界する。いっぱい結界して、それくらいしないとだめ。』ということと、 『そのために咒師は「あほ声」(あほほどの大声、あらん限りの声)を出さなければいけない』ということ。今年もこの話題が出ました。

上司永照師、実は今年の修二会では初日から(風邪のため喉を傷めて)声が割れて出なかったそうで、その出ない中でも、持てる力を振り絞ってあらん限りの「あほ声」を出している中で、「これは一体誰に聞かせるのか?」という疑問が出て「自分に聞かせるのだ」と気付いたそうです。自分に聞かせる、自分に言う・・・それがエコーとなって全てに届くのではとおっしゃってました。
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今回、実際に声明を上げて下さったのは、咒師の咒禁作法。
(大導師作法については声明の唱えはありませんでしたが、今年のレジュメにはフリガナがあり。)
鈴や貝も持ってきて下さり、「貝は平衆が吹くのだけれど・・」とおっしゃりながらも、貝を吹く場面では、一人何役もこなしてその場面を再現してくださいます。その一生懸命なようすが何とも楽しそうで、大導師までされた高位の方なのに、本当に修二会が大好きな方なんだと、だからこそ聞き入ってしまうのだなぁと、このような場を作ってくださったことや、この場に居合わせることができたことにつくづく有難いと思ったのでした。

余談ですが、この日に持ってこられた鈴は、もちろん修二会本番の時のものではなく小ぶりの鈴。でも別火坊での練習時には、二月堂の豆まきに撒かれるもっと小ぶりの鈴を使うのだそうです。というのは、別火中の練習は平衆は夜にするが咒師はお昼に千手堂にて行うそうで、その時に千手堂の鍵についていた豆まきの鈴を使うという、すごい小ネタが披露されたり。

二月堂で咒禁作法の時によく耳にする(というか、耳に残る)「ハッ」とか「ホッ」とかいう声。これは、四王勧請に続く後結界の時に、印を結んで呪を黙誦して唱える時に発せられるもので、初夜では「ウン・ハッタ」、後夜では「ホッ」と違う音で発せられて、達陀の時には、達陀松明点火を指示する時に「ホッ」の後に「ヒ」と唱えられることなども知りました。

・・・ということで、別火中に千手堂の近くで聴き耳をたてるとか、いつも眠くなってしまう咒禁作法もしっかり聴きとるとか、あと数か月後の修二会に想いを馳せるのでした。
最後に、「修二会の声明で一番声明らしいのは、やっぱり初夜の宝号」とおっしゃりながら、ちらりと「南無観自在菩薩~」と唱えて下さって、感激の中で講座を締めくくられたのでした。
ありがとうございました。