2022年8月24日水曜日

東大寺の四度加行のお話と朝巡拝

8月22日 夕刻より「ホテル尾花」さんにて
修二会練行衆処世界役の望月大仙師(鎌倉・普賢光明寺)による「東大寺の四度加行しどけぎょう」についての講話と、翌早朝の「四度加行の朝巡拝」に、宿泊付きにて参加してきました。
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東大寺二月堂周辺を散策していると、今までに何度か、山手観音堂に上がる石段のところに『行法中につき参拝以外の立入禁止』という紙が張られた赤いコーンを見かけたことがあります。
そして8月頃には、9月の不動堂入堂禁止期間のお知らせが不動堂に貼られて、4月後半頃から始まった修行が不動堂の「護摩加行」で最後になるとか、言葉だけは知っていた「四度加行」は、若いお坊様が一人前になる前の修行なんだと認識していました。

昨年は上司永観さんが、今年は九州のお坊様が加行をされていて、早朝散歩中に二月堂から開山堂へと巡拝されているお姿もよくお見かけしますが、さてそれでは実際にはどのような修行なのだろうと興味を持って講座に参加しました。

前振りが長くなりましたが、レジュメより「四度加行」とは?
「四度」の「四」とは「十八道」「金剛界」「胎蔵界」「護摩」の4段階を指す。「度」は得度の度と同じで「悟り」を意味する。「加行」は方便を意味するとあります。

修行者が阿闍梨となるための「伝法灌頂」を授かるための前方便としての四段階の修行で、流派があるが、東大寺では三寶院流憲深方さんぽういんけんじんがた(醍醐寺)を用いている。 

4種類の悟りの知恵を修するので四度加行というが、東大寺では「伝法灌頂」はしていない。(今はしていないが、真言院など密教を学んでいたので鎌倉期の次第書はたくさんある)

加行の各期間は4週間だが、護摩加行だけが4週間ではなく3週間なのは伝法灌頂の護摩が入っていないからで、4/19から始まって18週間で126日の期間。夏は一か月のお休み(夏安居)があり、この間は自由に過ごしていいようです。
何故19日から始まるのかというと、18日は二月堂寺役の後に山手観音堂が開けられるからで、一つの修法を4週間し、次の加行がまた19日から始まるようになっています。

山手観音堂(ご本尊は如意輪観音)では、一日三時(三回)、日中(正午)・初夜(夜7時)・後夜(早朝4時)と修行され、後夜が終わってから朝巡拝(社参)を5時頃にするという日程になっているようです。(午前3時起床、夜9時就寝)

修法と修法の間は、経典を読み込んだり、次の加行の次第書を書写したりと、人生の中で一番仏教に向き合った時間だったそうです。 また次の修法が始まる一週間前には大阿闍梨(大仙師の大阿闍梨は筒井長老)から伝授を受けるそうで、書写された次第書を拝見させていただきましたが、とても細かくて美しい字と図解(手書きのイラスト)がびっしりでした。

閑話休題
以前に、お昼時にお弁当のようなものを観音堂の方へ持って上がられる修行僧をお見かけしたことがあります。
食事は二月堂受納所で作られたものを、観音堂の前の寝泊まりされている小屋でいただくそうです。お風呂や洗濯も受納所で、トイレは小屋にある和式トイレではなく処世界部屋のウォシュレットトイレを使用していたとか、小屋ではムカデがよく出ることや、夏安居で一か月ほど留守にしている間に畳にカビが生えていたなど、厳しい修行の合間のそこでの様子(暮らしぶり?)も伺うことができました。

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さて、翌日は尾花さんを5時に出発して、社参のルートと反対周りでお参りいたしました。

5:15 浮雲園地で朝焼けを見ることができました!
南大門から東大寺へ入って、天皇殿
その後、大仏殿・八幡殿
白山神社から開山堂~二月堂へ。
朝の社参のルートとお唱えのお経は、 二月堂(観音経)開山堂(顕無辺仏土功徳経)白山神社(般若心経)大仏殿(般若心経)天皇殿(法華経十六品)八幡殿(ばらばら心経)。
(ばらばら心経は東大寺独自のものだそうです)
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そして山手観音堂へ。
山手観音堂前の加行小屋
白い粉はムカデ除けのものだそうです。
二月堂功徳日の時にはまだ蕾だった高砂百合が満開でした。
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加行が満行になったら、「加行札」というものを書いて各塔頭に配るそうで、塔頭ではこの札を玄関に掛けるそうです。
寶珠院や別火坊の加行札を見ることができました。

6:30 戒壇院前より、陽の光に照らされて神々しい朝の境内。

ホテルに戻って、美味しい朝食をいただき
お泊りすることで得られる旅の醍醐味を味わうひととき。
講座でご一緒になった皆さん(ほぼ全員知っている方だったけれど)との出会いも有難く得難いものでした。
今回は、夜の講座が終わったあとの「聞き込み寺」で途中退席したことがちょっと悔やまれるくらいよかったので、このような機会があればまた参加してみたいです。

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おまけの画像
「ならまち遊歩」開催中の赤い提灯が浮かぶ猿沢池と
ホテルの客室から望む興福寺五重塔。