春日大社・萬葉植物園に新しくできた施設「藤霞殿とうかでん」の南側に「神庭しんてい」と名づけられた庭園が完成し、5/17より一般公開されています。
5/21の旬祭に参列し、神職の旬祭講話を拝聴した後に、萬葉植物園へ行ってきました。
「神庭」の前に先に完成していた「藤霞殿
とうかでん」が奥に見えます。
春日大社駐車場付近にかつてあった「五箇屋ごかのや 」と呼ばれる仏教施設。そこでは、春日神に僧侶が国家安泰などを祈願していました。
「五箇屋」は神仏分離令で失われましたが、こうした歴史的経緯を踏まえ、「藤霞殿」を神仏習合の祈りを捧げる場として活用していくそうです。(建物内部は通常非公開で高級宿泊施設としても活用されます)
「藤霞殿」入口↑
右側にお茶室が、建物左にお風呂があり、その高低差は4m。
寝殿造りの建物の内部は書院造りで畳敷だそうです。
そして、こちらが「神庭」
建物から見て、ご神体山の御蓋山などが描かれた「春日宮曼荼羅」の世界を石や砂を使った「枯山水」で表現しています。
広さ約千平方メートルで一面に白砂を敷き詰め、一筋の表参道の奥に御蓋山と春日山を表す2つの築山を配置。境内周辺で採掘した三笠安山岩を組んで春日の神様を表現し、「春日宮曼荼羅」の世界が造られています。監修は作庭家で造園学者の尼﨑博正氏。
萬葉植物園に入園すると神庭を見ることができますが、「藤霞殿」から見える「春日宮曼荼羅」の世界と違って、それを横から拝見する形になります。もう少し近くに行ければいいのですが・・・。
などと思っていたら、6/7に尼﨑博正先生の講座が行われます!

詳細は春日大社HPのこちら
★に
講演後に現地庭園の見学もありますよ。
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そしてタイムリーなことに5月の旬祭講話は、「藤霞殿」や「神庭」をつくる上で春日大社として関わってこられた北野権禰宜のお話でした。
「建物と庭ー建築物と修景の関係についてー」
尼崎先生がお庭を作っていく前に土台を作る仕事、地形などからそれをどこにつくるかなどを選定する仕事を担当された北野権禰宜のお話は、少し裏話的なこともあって非常に興味深いものでした。
講座のお話は円窓亭の移築から始まり、移築する場所は円窓から植物園内の池が見える場所を選定。この場所と有機的に繋がるものとして庭や庭を見る建物を作っていくことになったそうです。
建設が始まるまでの前段階の諸手続きや、発掘調査にも話が及びました。春日大社には古地図がたくさん残っていて、この辺りからは何も出ないことがわかっていても、何か出ると発掘調査が入って建設が遅れるので、スタートで何事もなく進んでよかったこと。
地盤を改良して基礎をつくる。雨でも建設できるように素屋根を作る。
天井材に使った春日杉は、ご造替の折に国宝殿を建てるために伐採した杉や檜を乾かしてもらっていたのを使用できたこと。
天井裏の空調や防火設備など快適に過ごすために必要なものでもパッと見てどこにあるかわからないような仕様を考える・・・等々。
神庭の地面下にも排水管が設置。
春日宮曼荼羅で描かれている春日の神様を表している景石はすべて境内から持ってきたもの。参道の石は県内御所市から。
搬入された石から細長い石を手作業で選別して小端立
こばだて仕上げで木槌でたたくなど、お話を聞かないと知り得ないことなどがたくさんあって、勉強になりました。
竣工後の「神庭」、建物側から見た様子です。
綺麗な空間をつくる手段として、庭を造る・建物を造る。
景色と建築物との関係について示唆に富んだ講座でした。