2025年4月27日日曜日

奈良博「超 国宝」展

奈良国立博物館開館130年記念特別展「超 国宝ー祈りのかがやきー」

展示品143件のうち、国宝112件・重要文化財16件が出陳という、空前絶後の国宝の数にまず驚き、開催日を楽しみに待ちわびていた展覧会。

報道内覧会に参加された「美術展ナビ」のX内覧会レポートからの映像や『漆黒に浮かぶ法隆寺の百済観音のプロローグから真っ白な空間に国宝仏像が一点だけ配されたエピローグまで、超上質の連作短篇集のようでした』という言葉に心躍らせながら、ゆっくり時間を取って鑑賞してきました。

鑑賞後の感想の第一は、上↑に書いてあるように、美しく構成された展示空間の上質さにくらくらと酔いしれる醍醐味を味わえたこと。
「超 国宝」展自体が一つのアート作品のように思えたのです。

そして、国宝のあまりの多さに「国宝オールスター集結!」と、つい上辺だけを見てしまいがちですが、奈良博にお出ましになった国宝の一つ一つに物語があって、展示構成にストーリーが紡がれているのだと理解できました。

長文になりますが、展覧会鑑賞レポを書いてみました。
少しずつ書きながら、見てきた国宝を思い出しては幸せな気持ちになって、こんな展覧会はそうそうないのではと思いますし、多くの方に観ていただきたいと思いました。

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「第1章ー南都の大寺」
展示室に入ってまず目に飛び込んでくる法隆寺の百済観音像!
百済観音像は開館2年目(明治30年)から奈良博に出陳され、その後、明治44年から昭和5年にかけて展示されていたという歴史があります。
360度、どこからでも拝観できライティングも見事で、思わず手を合わせてしまいます。また、両隣の展示室から百済観音像の側面を拝見できるのも嬉しいことでした。

「第2章ー奈良博誕生」
奈良博誕生以前に開催されていた「奈良博覧会」に出ていたものが、時を越えて今回の展覧会にたくさん出陳されています。
例えば、阿弥陀如来倚像および両脇侍立像、竜首水瓶、鵲尾形柄香炉、八雷神面と天燈鬼・龍燈鬼立像、羽目板が出陳されていた興福寺の金銅燈籠などなど。
特に八雷神面と天燈鬼・龍燈鬼立像が一緒に写っている写真から、同じ並び方で展示されていて、まさに時空を超えて再会されたことに感動しておりました。

「第3章ー釈迦を慕う」
この章にも一つの物語があるようです。
清凉寺・釈迦如来立像(後期のみ)に深い信仰を寄せていた、西大寺中興の祖・叡尊上人が模造を制作した西大寺の釈迦如来立像(出陳は無し/写真展示)。
その西大寺の写しである唐招提寺の釈迦如来立像が前期に出陳されていますが、後期には清凉寺の釈迦如来立像と西大寺の叡尊坐像が同じ空間に展示されるようです。隣同士に並ばれるのか、向かい合う形になるのか、楽しみなことです。
この章では、飛鳥時代制作の刺繍でつくられた巨大な釈迦如来説法図が見事で、刺繍なのに大変美しい状態で残っていることも奇跡だと思いました。


「唐招提寺の釈迦如来立像」と「釈迦如来説法図」↑

「第4章ー美麗なる仏の世界」
円成寺の大日如来像の素晴らしさ!
絵画作品に施されている截金技法の美しさ!
病草子の内容に目が点になりながら、会場の中盤に差し掛かって、そろそろ疲れが出てくる頃なのに、まだまだ気を引き締めて観なければと思うような国宝の数々。
牛皮華鬘の彩色にうっとりしたり、子嶋曼荼羅(前期のみ)を掛けるために奈良博のこのスペースが作られたことを思い出したり、とにかく多種多様な国宝が登場して飽きさせません。疲れている暇がないというのもすごいことです。
図録より「十一面観音像」(前期のみ)の部分↑
絵画作品はとにかく截金が施されたところが美しく繊細で、後期展示の「虚空蔵菩薩像」を図録で見て単眼鏡を持って行かなければと心した次第です。

「第5章ー神々の神宝」
石上神宮の七支刀や春日大社の金地螺鈿毛抜形太刀など、それぞれの神社や過去の展覧会で観覧したことがあっても、また今回の展覧会で拝見できるのは格別なことのように思えます。

また、それほど拝観の機会がない(お正月3が日のみ)薬師寺の吉祥天像(5/6まで)も、2週間ほどいらっしゃいます。

吉祥天像は元々は休ヶ岡八幡宮に伝わってお正月の修正会(吉祥悔過)の本尊であったそうで、休ヶ岡八幡宮の八幡三神坐像や古神宝、板絵神像などと一緒にお寺の仏画(吉祥天像)が展示されていることにも物語を感じました。
修正会は江戸時代までは1~7日は八幡宮で、8~14日は薬師寺金堂で行われ、吉祥天像は法会創始時の奈良時代から本尊だったこと、今回の展覧会では、150年ぶりに八幡三神像との再会がポイント!と、4/25に開催された「お坊さんと読む日本霊異記」で高次喜勝師がお話されていました。そして小さいサイズの仏画であるのは、八幡宮と金堂の間を持ち運びしやすいからではとも。

手向山八幡宮の唐鞍↓
氏神さまでもある手向山さんから出陳があると、それだけで嬉しいし誇らしいものですね。

「第6章ー写経の美と名僧の墨蹟」
今までの展覧会(例えば正倉院展など)では、写経のコーナーで時間を取らずにさーっと拝見することが多かったのですが、今回は「さすが国宝揃い!」と、すべての写経のあまりの美しさに時間をかけてじっくり丁寧に見入ってしまいました。素晴らしかったです。

「第7章ー未来への祈り」
最後の一室は、真っ白い空間に菩薩半跏像。前期は京都の宝菩提院願徳寺の仏さま、後期は中宮寺の菩薩半跏像がいらっしゃいます。
それにしてもなんて心憎いまでの演出なのでしょう。
おかげでずっと力を込めて観ていた気持ちが鎮まって、心がほぐれたように思いました。

素晴らしい国宝の数々、それも奈良博や奈良の歴史に深い関わりを持つ国宝の数々を一堂に拝見できて眼福でした。
このような美しい状態を保つために保存修理や補修を担ってこられた奈良博の役割に、敬意と感謝の念でいっぱいになりました。
第1章での、南都の大寺との関係をみても、奈良博あっての奈良の社寺なのではと思いました。
あらためて、開館130周年おめでとうございます。

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会期:2025年4/19~6/15 (前期:~5/18 後期:5/20~)
開館時間:9:30~17:00(入館は16:30まで)
休館日:毎週月曜日と5/7(但し4/28と5/5は開館)
※今回の特別展では週末の開館時間の延長がありません。
※観覧には相当の時間がかかりますので余裕をもって入館ください。