2019年8月20日火曜日

奈良市写真美術館「布の来歴-ひろしまから」

奈良市写真美術館で開催中の、写真家・石内都さんの「布の来歴-ひろしまから」を観に行ってきました。
2008年に「広島市現代美術館」で、広島平和記念資料館に収められている衣服や装飾品などの品々を美しく写し取ったシリーズ「ひろしま」を初公開された時に、観に行きたいと思いつつ行けなかったので、奈良での展覧会は楽しみでした。
また、先日テレビで見た「ひろしま」から受けた衝撃。・・・原爆投下について、知っているようでいて(それは歴史的な事実を広く浅く知っているだけで)、実は何一つ知らなかったのではと、今まで感情移入することなく眺めていただけだったと、改めて自分の想像力のなさに気付いたのですが・・・。
原爆投下の8年後に制作された映画は、原爆投下直後の広島の悲惨な状況を隠すこともなく淡々と描き、そして原爆投下後わずか7年経っての復興の早さと、その陰で忘れられていく被爆者の思いなど、知らなかったことがたくさんあるのですが、その中で、一般市民8万8000人が出演しその出演者の多くが被爆した人々で、 実際の被爆した衣類を着て演じられたということに衝撃を受けました。

特に驚いた「被爆した時の衣服を着て」というところから、石内都さんの「布の来歴-ひろしまから」を思い出し、まだ観に行ってなかった奈良市写真美術館へと翌日に足を運んだのでした。

展覧会の感想としては・・・
「ひろしま」シリーズの作品だけでなく、 石内さんの故郷の桐生の絹織物や銘仙を撮影した作品「絹の夢」のシリーズや、アメリカのファッションデザイナーのリック・オウエンスの亡き父の着物や、徳島に戦前から伝わる阿波人形浄瑠璃の衣装を撮影した作品なども同じ分量で展示されていて、「布の来歴-ひろしまから」のタイトルから、被爆した衣類の写真ばかりかと思い込んでいた私はちょっと肩透かしを食らったような気分でした。(特に映画を見た後に訪れたものですから・・・)
でも石内さんの作品に触れるのが初めてなので、広く浅くでしたが、ちょうどいい入門編になったのかもしれません。
それにしても、ファーストファッションなどなかった時代に、衣服は丁寧に仕立て直して、また次の世代へと着継がれていったものなのですね。戦時中というと、もんぺが当たり前だった時代に、創意工夫された小さなお洒落が見え隠れする衣服。
これを着ていた人の人生を想像し、考えさせられた展覧会でした。
「ひろしま」シリーズの作品をもっとたくさん見たかったという欲求不満も少し残りましたので、2008年に出版された「ひろしま」を購入。奈良倶楽部の図書室に置いてますのでご覧ください。

「布の来歴-ひろしまから」
会場:奈良市写真美術館
会期:9/1(日)まで